日本の大企業に勤める技術者にとって、「経営」とか「経営学」は、きっととても遠い存在なのではないでしょうか?あまり自分には関係のないことと思ってないですか?
日本企業、特に大手電機メーカーが全体的に元気ないですよね。シャープや東芝がこの先どうなっていくのか?私自身がずっと技術畑を歩んできたこともあって、大変気になっています。
いったい何が問題なのでしょう?
ひとことで言ってしまうと、経営の体たらくですよね。「経営」って何なのかっていう話は難しい話しになるのでここではしませんが、すごく単純な比較で言うと、アメリカ社会では多くのエリートと呼ばれる人たちは、自分の専門分野の学位の他に経営学修士(MBA)を取得する人が、日本人よりも多くいます。大企業に進むエリートたちは、専門分野での知識と経営学の知識を武器に、早い人であれば30歳代前半で、大企業の役員クラスに上り詰めます。
一方日本はというと、年功序列を見直す動きはあるものの、なかなか30歳代で大企業のトップクラスには普通ではなれませんよね。しかも、そこそこの(時間的な)経験を積んで日本企業のトップに登りつめた人たちの中で、「経営学」をきちんと学んだ人たちはどれくらいいるのでしょうか?日本企業とアメリカ企業の両方を見てきた私としては、日本企業の実情はかなりお寒い状況と言わざるを得ず、わかりやすく言うと無免許運転の経営と免許をとってやってるのとの違いくらい大きな差があるように思えます。
だからといって日本人の技術者が必ずしもMBAを取得する必要はないのだと私は思います。ただ、「経営学」というか「経営」ということを、今の若い人たちがもう少し身近なものとして捉えて、身近なところから経営学を学ぶようになることで、10年後、20年後の日本企業、ひいては日本そのものが、強く、活性化されていくものと私は信じているわけです。
「経営学」に関わるトピックについて、できるだけわかりやすく、今まで「経営学」に触れたことのない人にも興味をもってもらえるような「経営学講座」を作っていきます。
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技術者のための経営学講座
特別講座
「経営学」に興味を持つ
まずは、経営学に興味、関心を持つところから始めましょう。楽しくなければ勉強は絶対に続きません。
「経営」というのが、いかに身近なものかを感じるには、自分の会社、同業他社、あるいは世間で騒がれている成功、あるいは失敗した会社の状況を本、雑誌、ネットなどで見るだけでも、見方次第で関心がわいてくるはずです。液晶で失敗したS社については、もう数年前から社内の経営者間でのイザコザや、なぜうまくいかなかったかを、ゴシップ記事的に週刊誌やネット情報で伝えられています。また最近、「シャープ崩壊」なんて本が日経から出ています。
成功例としては、アップル(特にスティーブジョブズの偉大さ)、アマゾン、グーグルなどのアメリカ企業の成功や、日本でいうと、エレクトロニクスの衰退とは裏腹に、トヨタだけが成功を続けていて、その秘密は何か、という本も多数出ています。技術者から見ると、ちょっと違う世界ですが、「スターバックス成功物語」という本では、ハワード・シュルツがどうやってスターバックスを成功に導いたか、どんなチャンスを得て、どうやって重要な人たちと出会って、時には困難や挫折をどう乗り越えたか、これも企業研究という経営学のひとつの入り口だと思います。
余談ですが、成功と失敗はわかりやすく、情報もたくさんありますが、最近感じるのはどちらでもないこと。つまり何もやらない経営者って、実はたくさんいるように思います。「経営」をしていない、だから失敗とは言われないけど、少しずつ会社が弱体化していく。エンジニアを10年近くかけて弱らせてしまうというのは、まさにこれですね。実は一番罪が重いかもしれません。みなさんの周りにいませんか?こういう経営者。
さて、話を戻して、経営に関心を持つために、みなさんが面白いと感じる本を一冊読んでみましょう。このサイトでは、あまり「経営学」的な本を普段あまり読まない人、難しい本が苦手な人も想定した上で、できるだけ読みやすい本を紹介していこうと思います。
とっかかりとして、何冊か紹介してみます。
まずは、前述の「スターバックス成功物語」ハワード・シュルツ/ドリー・ジョーンズ・ヤング著、日経BP社。単に著者の成功体験としてだけでなく、「経営」とか「起業」という視点で読んでみると、自分にも何かできそうな想いがしてくるのではないでしょうか。おすすめの一冊です。
また、読書そのものが好きじゃない人向けで、なおかつ、最近ちょっとやる気がなくなっている人向けなのが、「白いネコは何をくれた?」佐藤義典著、フォレスト出版。マーケティングの基本を恋愛小説風にマンガチックに書いた本ですが、楽しく、なんとなく元気が湧いてきて、自然にマーケティング、あるいは経営参画ってどういうことかを知ることができます。
この機会に一気に経営学に入っていこうと、強めの意思をもった人には、「ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文」ダイヤモンド社を推薦します。みなさんが聞いたことのある著名な先生たち、ドラッカー、マイケル・ポーター、クリステンセンたちが書いた10個の小論文をまとめたものです。古いものから最近のものまでありますが、選りすぐりの経営学に関する論文です。戦略、イノベーション、経営の落とし穴、コア・コンピタンス経営などなど、本来は企業の経営者向けのものなのですが、非常に勉強になるし、ひとつひとつが短いので、難しすぎると思ったら飛ばしてもいいし、10個のうちいくつかでも読んでみてはいかがでしょうか。
また、冒頭でエンジニア受難の時代、という書き方をしましたが、私の危機感と同じ感覚をもって、理系のエンジニア向けにアドバイスを書いた「理系思考」大滝令嗣著、ランダムハウス講談社は、まずは少し危機感を共有して、なにくそと頑張ってみたい人向けです。元気づけてくれるし、エンジニアだからこそできることを教えてくれます。途中、MBA取得についてや、「経営学と無縁の経営者たち」などと、本当に私としては同じ感覚を共有できました。
さて、経営学とは、どんな学問かというと、学ぶべきことが非常にたくさんあります。思いつくだけでも下記のようになります。
・企業研究
・戦略(競争戦略、経営戦略など)
・イノベーション
・マーケティング
・会計(アカウンティング)
・ビジネスモデル
・リーダーシップ(組織論)
・M&A
・人事施策
・グローバル化
・ガバナンス
MBAコースに進めば、これらすべてを短期間で詰め込むわけです。短期間でたくさんの本を読み、課題をこなし、グループで議論し、また講義の中でも議論をし、人的ネットワークも作っていって、強い思考力(本質思考、論理的思考、戦略的思考)を養っていきます。焦ることはありません。大事なことは、最後の部分、つまり強い思考力を養うところです。とりわけ私個人は「本質思考力」つまり、どんなシチュエーションでもすぐに本質を見抜ける力を、経営者感覚で作っていくことが重要であって、MBAコースに行かなくても絶対に獲得できる力だと思います。
このあと、上記に挙げた経営学の要素のうち、大事なところを中心に書籍の紹介をしながら、私の想いなどを披露できたらと思っています。
「経営学」に興味をもって、少しずつ周りの状況を把握できるようになって、現実の経営者たちと同じ視線で物事を見れるように一歩ずつ進んで行って、自分のこれからのキャリプランの参考にしていただければ、こんなうれしいことはありません。
本物になるポイント
大企業の事業継続でも、ベンチャー企業における新規事業立ち上げにおいても、経営の本質は同じだと思います。
経営学を血肉にして、本物のビジネスマン、あるいは経営者になるポイントは何でしょうか?アメリカで5本の指に入るMayfield財団のベンチャーキャピタリストであるDr. Pedram Mokrain(スタンフォード大学の経済学教授でもある)が講義の中で、自分が投資するかどうかの判断をするときに人を見るポイントは、
- Why? なぜ必要か?真の市場ニーズに合致するか?
- What? 何を事業のコアとするのか?
- Where? 市場はどこか?お金を払ってくれるのは誰か?
- How? ビジネスモデルは?どうやってリターンを得るか?
- When? いつチャンス到来か?タイミングと事業性、継続性は?
- Who?
そして最後のWho?は、1~5を踏まえて、誰がやるのか?その人を観て投資の判断をするとのことです。Dr. Mokrainは、ほとんどの場合、インタビューをして最初の30秒でその人が投資できる人がどうか判断ができるとおっしゃっています。
つまり、1~5の内容そのものを見ようとしているわけではなくて、人物そのものを見て1~5の「本質」を作れる「人物」かどうか、本質を見極められる「人物」かどうかを見抜くということであって、その本質を見極める力は体からにじみでるもので、わかる人にとっては簡単に見極められるということだと思います。
すべては「基本」であって、何も特別なことではありません。でも如何に「本質」を掴んでいるか、掴める力を見につけるかということが重要だと思っています。経営学を通して、「本質力」を身につけて「本物」になっていきましょう。
経営学コラム
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