経営学とは、企業研究そのものと言ってもいいと思います。経営学の要素である戦略論、組織論、マーケティング理論なども、生きた経営学として、実在する企業活動から検証、実証されて考察され、研究されていきます。
ハーバードビジネススクールのリーダーシップ研修などで取り上げられる題材として、GEのトップタレントを作るしくみや、ハワード・シュルツがどうやってスターバックスを立ち上げていったか、あるいは、Johnson & Jonsonに起こったタイレノール毒物混入事件をリーダーシップがどうやって乗り切ったか、また、NASAのスペースシャトル「コロンビア号」の空中分解事件はなぜ起こってしまったか、事件発生までの実際のミッションを振り返ることでリスクマネージメントのあり方を学んだりします。
クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」でも、ハードディスク業界で実際に起こったイノベーションについて解説していくことで、優良企業が正しい判断で進める持続的イノベーションが、破壊的イノベーションに敗北していく姿を浮き彫りにします。
つまり、経営学を学ぶということは、「企業」について学ぶことそのものであり、成功も失敗も大切な題材になります。
企業はありとあらゆるところに存在するわけで、自分の身の回りの企業経営を見ることがとても大切なことになります。
企業をみる、その見方を身につけるのが、経営学を進めるということかもしれません。
自分の会社、競合会社をどんな風に見るかを、企業研究つまりケーススタディーからどのように学んでいくかを覗いてみましょう。
「ハーバード戦略教室」シンシア・モンゴメリー著では、企業経営者を対象にした教室で、実際に題材にしたケーススタディで受講者が何を学んで、どうやって本当の戦略を作っていくかを解説してくれます。冒頭で、アメリカの住宅建材の総合企業「マスコ」の経営者であるリチャード・アノージマンが、巨額の手元資金を使って新規事業として家具業界に参入するという決断をしていくということを、アノージマンの立場で受講生が戦略を考えていくという構成から始まります。企業買収を繰り返し、一見うまくいっているように見えてた新規事業が、実は大失敗だったというところから、いかに優秀な経営者でも、インダストリー・エフェクトを理解せずに、戦略なく進むことが愚かであるかを学びます。また、イケアの例では、他社との違いを際立たせる目標を立てることの重要性を学び、グッチの例では、グッチ家が、一族の覇権争いで衰退したのち(日本のXX家具が思い浮かびますが)、グッチの復活を託されたデ・ソーレが現実を直視したうえで目標を設定しなおし、それを確実に実行していくことで見事にグッチを蘇らせていきます。
「ウィニング 勝利の経営」ジャック。ウェルチ著では、GEの偉大な経営者であったジャック・ウェルチが実際にGEの経営で実践してきた強いリーダーを作り続けるための人事施策や企業経営での危機管理、戦略などの勝つための経営と、一人一人が幸福になるための日々の心構えなどの話をバランスよく説明してくれています。
企業研究は、いろんな視点で見ることができると思います。スーパーマネージャと呼ばれるカリスマ経営者たちが、どのようなことを考えて、企業を強くするためのアイデアを出して実現していくか、それらがどういう点でよかったのか悪かったのか、あるいは、身近な企業、自分の企業と比べて何がどう違うのかを考えてみると、それだけでも自分にも何かできるのではないかと思えてくると思いますよ。
ぜひとも、まず第一歩を踏み出してみましょう。